コマツのDX推進事例「スマートコンストラクション」|建設業界に起こした変革とは?

「DX銘柄2020」のグランプリを受賞した建設機械大手の「コマツ」。コマツは「スマートコンストラクション」を開発したことにより、安全で生産性の高い施工の実現に成功しました。また、このDXの影響もあり、建設業界における働き方そのものが変化し始めています。

今回は、コマツが目指す建築業界のDX、スマートコンストラクションのレイヤーと種類について解説します。最後までご覧になることで、コマツが導入したDXを深く理解できる上、自社のDX推進に有効活用できるでしょう。

DX事例

コマツが目指す建設業界のDXとは?

大規模なビジネスモデルの変革を目指す「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。コマツはこのDXを推進して何を目指しているのでしょうか?まずは、コマツが目指す建設業界のDXを明確にしましょう。

コマツは「DX銘柄2020」のグランプリを受賞した建設機械の大手企業。コマツが導入しているDXは「スマートコンストラクション」という、建設現場全体をICT(情報通信技術)でつなぐサービスです。コマツはこの「スマートコンストラクション」を活用し、「安全性・生産性の高い、スマートでクリーンな建設現場を実現する」というビジョンを掲げています。そして、日本の建設業界におけるいくつもの問題解決を目指しています。

なお、建設業界における労働力不足の影響により、このままでは小規模の建設会社が減少してしまいます。この業界全体の課題を解決できない場合、コマツの手がけるビジネスが成り立たなくなってしまうため、「業界全体の課題はコマツの課題」という思いのもと、コマツは積極的にDXを推進しています。

コマツが考えるDXのポイント

コマツはDXを推進する上で下記4つのポイントが重要だと考えています。

  1. 社会課題の解決に向け、コマツ自身のDXが必須であると経営者が理解し、やり切る意思を固める
  2. 顧客のUXを向上のために施工だけではなく、そのほかの各プロセスについてもソリューションを提供
  3. ランドログ・スマートコンストラクションといったデジタル関連サービスにより、建機の付加価値を向上させるビジネスモデル
  4. 現場のプロとして採用・育成したスマートコンストラクションコンサルタントが顧客に手厚いサポートを提供し、また国内外の一流エンジニアを適切に起用

コマツのDX推進事例「スマートコンストラクション」について

ここまで、コマツが目指す建設業界のDXを解説しました。続いて、「スマートコンストラクション」について詳しくみていきましょう。DXを推進するコマツの影響力が明確になるはずです。

コマツが推進しているDX「スマートコンストラクション」は、サーバーレスやデータベースなどのAWS(Amazon Web Services)を活用し、日本・米国・欧州など幅広く提供しています。この「スマートコンストラクション」は、顧客の建設生産プロセスのあらゆる「モノ」データをICT(情報通信技術)でつなぐことにより、現場におけるあらゆるデータを見える化します。

具体的には、ドローンによる3D測量、3D施工計画やシミュレーション、アプリによる3D施工・施工管理などがあげられます。それに伴い、安全で生産性の高いクリーンな「未来の現場」を実現させています。また、従来における施工の各プロセスが最新のデジタル技術により、安全性と生産性の向上が図れています。

さらに、2019年からはすべてのプロセスがデジタル化され、「ヨコ」としてつながることにより、施工全体の最適化を実現しています。そのほか、実際の現場で「スマートコンストラクション」を用いた施工を検証するなど、さらなる発展に向けたプロジェクトを進めています。

映像で伝えるコマツのDX

コマツは「スマートコンストラクション」のソリューションを社内外に広める施策として、Webサイトによる情報発信にも力を入れています。「スマートコンストラクション」のコンセプト映像や現場のチャレンジ企画など、さまざまな映像を積極的に配信しています。また、「スマートコンストラクション」推進本部長の「四家」氏は以下のように述べています。

「映像を使うと、口頭で説明するより理解が早い。コンセプト映像に限らず、毎回半年先、1年先の姿を想像して映像化することで、社内外にスマートコンストラクションの取り組みを宣言しています」

ほかにも、コマツはFacebookを活用したマーケティングなど、「スマートコンストラクション」を伝えるための工夫が行われています。なお、今後は海外にも事業を拡大していく予定です。

コマツのDX推進事例「スマートコンストラクション」における3つのレイヤー

コマツが推進してる「スマートコンストラクション」の基礎概要が理解できたところで、3つのレイヤーについてみていきましょう。ソリューションは「デジタル化層」「プラットフォーム層」「アプリ層」の3つのレイヤーで構成されています。

現場の機械やサプライヤーをデジタル化する「デジタル化層」では、以下4つのプロセスに分類されています。

  1. 日々地形/導線解析:Edge処理
  2. 車両情報:車両軌跡・運搬土量
  3. 計測情報:3Dスキャナー・ステレオカメラ・ドローン
  4. 建機稼働:一般建機・ICT建機

これらデジタルデータの高速処理を実行し、機械・ヒト・材料・地形などのデータを情報に変換するレイヤーが「プラットフォーム層」です。一方で、顧客に対して最適化された価値を創造するのが「アプリ層」になります。なお、このアプリ層は下記4つのレベルが存在します。

  • レベル1:機労材/地形データの可視化
  • レベル2:可視化データのモニタリング(可視化データ分析/課題発見)
  • レベル3:施工計画のリアルタイム最適化(施工計画作成/日々の見直し)
  • レベル4:施工タスクを生成・機労材へ受渡(ガイダンス/自動制御/最適調達)

このように、「スマートコンストラクション」は3つに分けられたレイヤーによって最適化されています。

コマツのDX推進事例「スマートコンストラクション」における種類

「スマートコンストラクション」のレイヤーは大まかに理解できたでしょうか?続いて、「スマートコンストラクション」における種類を解説していきます。

コマツの「スマートコンストラクション」は、新IoTデバイスと新アプリケーションを活用し、実際の現場とデジタルにおける現場を同期させて施工を最適化させています。実際の現場とデジタルの現場を同期させる「デジタルツイン」を行うメリットとしては、どこにいても同じ情報をリアルタイムで共有できる、データに基づいてPDCAを回して最適化できる、未来を予測できるなどがあげられます。それらメリットを実現するものが、下記13種類のツールです。

【デジタルレイヤー】

  1. スマートコンストラクション「Drone」:地形測量用のドローン機体
  2. スマートコンストラクション「Edge」:写真・点群生成/固定局
  3. 「ICT 建機」:最先端3D-MC建機
  4. スマートコンストラクション「Retrofit」:後付け3D-MGキット
  5. スマートコンストラクション「Fleet」:スマートフォン/デバイス

【アプリレイヤー】

  1. スマートコンストラクション「Dashboard」:3D地形・計測ビュアー/機労材コスト分析
  2. スマートコンストラクション「Simulation」:施工計画・機労材配置シミュレーション/デジタルタスク
  3. スマートコンストラクション「Design」:3D作図(CAD)
  4. スマートコンストラクション「AR」:現況地形と3Dモデル重ね合せ/進捗確認
  5. スマートコンストラクション「Fleet」:建機・ダンプの稼働ビュアー/分析
  6. スマートコンストラクション「Field」:作業員の電子日報/将来タスクの送信
  7. スマートコンストラクション「Remote」:建機モニター遠隔アクセス/TIN送信
  8. スマートコンストラクション「Insight」:経営者用ダッシュボード

コマツはこれら「スマートコンストラクション」を用いて、複数の施工をリアルタイムで遠隔につなぎ、最適なコントロールの実現を目指しています。

コマツのDX推進事例からわかる建設業界のDX

ここまで、「スマートコンストラクション」の種類を解説しました。最後に、コマツのDX推進事例からわかる建設業界のDXをお話します。

コマツのDX推進事例を始めとして、デジタル化の促進により建設現場の遠隔管理が可能になりつつあります。今後はこの流れがさらに加速し、建設業界の働き方そのものが変化します。そして、DXが進んだ現場として「密」が起こらない環境の実現が予想されています。

現状、建設業界のDXが推進され始めているとはいえ、建機を操縦する人やその動きを誘導する人、現場で計画を確認する人など、建設のあらゆるプロセスで人間の手が必要です。それに伴い、プロジェクトを進行する上では多大なる労力を必要とします。

しかし、これからはドローン軽量や3Dデータの活用から、現場での作業そのものが減少し、オフィス業務の増加が予想されています。そのため、将来的にはDXの推進によって現場での「密」が解消され、働きやすい環境へとつながっていきます。

まとめ

本記事では、コマツが目指す建築業界のDX、スマートコンストラクションのレイヤーと種類について解説しました。

コマツは建設現場をICT(情報通信技術)でつなぐDX「スマートコンストラクション」を開発し、安全性・生産性の向上を建設業界全体に実現させています。この「スマートコンストラクション」は13種類ものツールがあり、日本国内だけでなく米国・欧州にも提供しています。

建設業界のDX推進したい方は、ぜひ本記事で解説したコマツの「スマートコンストラクション」を参考にしてみてください。また、過去に解説した「企業のDX活用事例を業種別に5つ紹介!成功から学ぶ3つのポイントとは?」をチェックし、DXの導入方法をより明確にしましょう。

「What'sDX」編集部

執筆「What'sDX」編集部

これからDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうとしている、既に取り組んでいるみなさまのさまざまな「What’s DX?」の答えやヒントが見つかるサイト「What'sDX」の編集部です。