DX推進における政府政策に対する4つの考え方とは?政府の方向性を見定めよう!
DX推進に対する政府政策の方向性についてご存知ですか?政府が提言している「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート2(中間取りまとめ)」では、企業DXを成功させるためのヒントが盛り込まれています。企業のDX推進を成功させたいという方は参考になるはずです。
そのため本記事では、DX推進に対する政府政策の方向性、DX推進における政府の施策について解説します。政府の考える施策を根本から理解すれば、企業DXの成功パターンが明らかになるはずです。
DX推進に対する政府政策の方向性とは?
まずは、DX推進に対する政府政策の方向性を明確にしましょう。
政府は日本企業がレガシーカルチャー(時代遅れの文化や形態)から脱却し、企業DXを前進させるためのあらゆる政策を打ち出しています。例えば、DXに関する共通理解の形成やDX戦略の立案といった支援があげられます。政府はこのような支援に踏み込む必要性を示していることから、「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート2(中間取りまとめ)」で大きく分けて4つの施策を明記しています。
- 事業変革の環境整備
- デジタル社会基盤の形成
- 産業変革の制度的支援
- 人材変革
政府が掲げる上記の施策は企業DXにおいて非常に重要です。また、政府は日本企業のDXを推進させるにあたって下記のように提言しています。
「DXの推進においては、あるべき論を語るのではなく、自ら変革をけん引し現実の課題の解決や新たな価値の提案を推進するような、実行力のある人材が求められる。また、過去の企業文化を打破するためには、新しい発想を持つ若手人材や外部人材が活躍できる環境整備も必要である。」
このような政府政策を打ち出していることから、大企業だけでなく地域の中小企業を含めてDX推進を促している方向性が掴み取れます。
DX推進における政府の施策:事業変革の環境整備
DX推進に対する政府政策の方向性がわかったところで、DX推進における政府の施策をみていきましょう。まずは1つ目の「事業変革の環境整備」から解説していきます。
DXの認知・理解向上に向けた施策
政府は地域経済の中心となる企業を対象にアンケートを行いました。その結果、DXを実施している企業は全体の9%に留まり、全体の約5割は「DXをよく知らない・聞いたことがない」という回答であることが明らかになりました。
この現状に対して政府は「DXの認知・理解向上に向けた施策」として、デジタル化を行うきっかけとなるツールの事例集の作成を決めています。同時に、共通理解形成のためのポイント集を活用する予定です。
共通理解形成のためのポイント集の策定
企業DXを推進する上では経営層や事業部門、IT部門の対話や共通視点が重要であるほか、共同してコンセプトを描いていく必要性を提言しています。また、共通理解形成のために、まずは経営者が将来のビジネスを見据えた上での取り組みやビジョンを示すことがキーポイントだとしています。
上記についての対応策として、各関係者間のコミュニケーション不足を解消するためにも、経営層向けに対話の中身を取りまとめたポイント集の整理が考えられています。
CIO/CDXO の役割再定義
近年は企業DXを推進する経営レベルのポジション、CDO(最高デジタル責任者)やCDXO(最高DX責任者)を設ける企業が増えています。そのことから、CIOとCDXOの関係性を明確にする必要があると政府は発案しています。
DXを率先して取り進める経営層の機能として、上記のような重要な役割やガバナンスの対象事項についての再定義を行う予定です。また、企業がDXを推進するための適切な人材をアサインするとともに、デジタル技術を有効的に導入できる仕組みを促しています。
DX成功パターンの策定
政府は経営者について、経営とITは表裏一体であるという認識を持った上で、下記2つの視点にもとづいた戦略を立てる必要性を持ち掛けています。
- ビジョンや事業目的といった上位の目標の達成に向けて、デジタルを使いこなすことで経営の課題を解決するという視点
- デジタルだからこそ可能になる新たなビジネスモデルを模索するという視点
上記2つの視点を確立するためにも、DXの取り組み領域や成功事例をパターン化し、企業における具体的なアクションを検討させる「DX成功パターン」の策定が立案されました。また、政府はこの策定を活用することにより、DX推進に対して具体的な取り組みができると予測しています。
DX推進状況の把握
2019年より行っているDX推進指標の自己診断においては、製造業の大企業に偏っていることから、あらゆる業種や業界の網羅的な調査に至っていません。政府はDXの効果的な政策につなげるためにも、DX推進指標のさらなる周知が必要であると考えています。
DX推進状況を把握するにあたって、DX推進指標の周知を進めることに加え、収集されたデータのさらなる活用を検討しています。また、既存のITシステムに関する技術的負債や対応度を可視化するべく、プラットフォームデジタル化指標の策定も発案しました。
DX推進における政府の施策:デジタル社会基盤の形成
ここまで、DX推進における政府の施策1つ目「事業変革の環境整備」について解説しました。続いて、「デジタル社会基盤の形成」をみていきましょう。
共通プラットフォーム推進
企業が経営資源を競争領域に集中するためには、各企業が別々のITシステムを開発するのではなく、業界内の他者と共同のプラットフォームを構築すべきだと明記しています。
その共通プラットフォームを推進するための対応策として、共通プラットフォームの形成を阻害している要因の除去、一層の加速のための施策などが検討されています。また具体的な取り組み内容は、協調領域を形成するために議論の場の提供や、共通プラットフォーム開発に関する支援などが考えられています。
デジタルアーキテクチャ推進
政府はデジタル企業同士が連携を行い、エコシステムを実現できるデジタルプラットフォームの形成が重要だと提言しています。このプラットフォームを実施することにより、データ駆動型ビジネス産業が発展し、それに伴い産業競争力の強化に期待できると予測しています。
デジタルアーキテクチャ推進を図るため、2020年5月15日にIPA(情報処理推進機構)が「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター」を設立しました。この推進機関を設立したことで、全体の見取り図である「アーキテクチャ」を設けられるとともに、その設立を実施できる人材の育成を進めています。
DX推進における政府の施策:産業変革の制度的支援・人材変革
DX推進における政府の施策2つ目「デジタル社会基盤の形成」は理解できたでしょうか?本項では3つ目「産業変革の制度的支援」と4つ目「人材変革」をあわせて解説します。
ツール導入に対する支援
「DXを何から始めれば良いかわからない」という企業においては、「企業文化を変革する小さな成功体験」がDXの第一歩と位置づけることが重要だとされます。
そのため、これからDXを推進する中小企業をはじめとした多くの企業に対し、ものづくり補助金やIT導入補助金、中小企業デジタル化応援隊などの既存施策を普及させていく方針です。また、情報を必要としている企業については、既存の情報提供の枠組みを利用しつつ展開していく算段が立てられています。
ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進
政府は産業変革の加速に向けて、ユーザー企業のDXを起点としたベンダー企業の事業構造の変革が重要であると考えています。それに伴い、ユーザー企業とベンダー企業の相違を最終的になくす方向性を見出しています。
ユーザー企業とベンダー企業の共創を推進するため、ベンダー企業の競争力を定量的に計測できる指標が策定されました。さらに、ビジネスモデルの変革を阻害している要因を明確にし、政府としての方策を検討しています。
デジタル技術を活用するビジネスモデル変革の支援
企業の大きさは関係なく各企業が社会とつながり、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革に取り組む姿勢が大切であるとされています。そのことから、政府は以下3つのポイントを後押ししています。
- DX投資促進税制
- 中小企業向けDX推進指標の策定
- DX認定企業向けの金融支援
政府が考えるこれら支援によって、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革を促しています。
研究開発に対する支援
リアルデータやAIを活用したDX化を図る企業を支援するためにも、研究開発の税制について見直しが実施されています。具体的には、控除上限の引き上げ、研究開発費の維持・増加させるための税額控除率の見直しなどがあげられます。
また、クラウドを通じてサービスを提供するソフトウェアに対し、研究開発を対象に追加する施策が立てられました。それに伴い、経済のデジタル化における対応を推進するほか、オープンイノベーション型の運用改善を図っています。
リスキル・流動化環境の整備
政府は人材変革の施策として「リスキル・流動化環境の整備」を立案しています。立案した理由は、企業DXを取り進める上では、DX推進人材が必要不可欠であると考えているためです。
DX推進人材とは、DXに関する分野に精通しており、社内のDX化を率先して取り進める人材のことを指します。このDX推進人材の重要性について政府は提言しています。
DX推進人材を確保するための対応策は、優秀な人材として自ら学べるように教育の仕組みを整備することだと考えています。また必要な人材確保に向けて、人材のスキルをみえる化し、マッチングを可能とする仕組みづくりの検討を進めています。
DX推進に対する政府の今後の方向性
最後に、DX推進に対する政府の今後の方向性について解説します。
政府は今後の方向性として、本記事で解説した施策の具体的な検討を進めていく予定です。さらに、各施策の展開はデータにもとづいた効果予測を定期的に進めることで、施策の効果を向上させるフィードバックを繰り返していくと明確にしました。
なお、今後の検討の方向性をまとめた表は下記のとおりです。
対応策 | 今後の検討の方向性 |
DXの認知・理解向上 | 事例集の作成を検討・共通理解形成のためのポイント集を活用 |
共通理解形成のためのポイント集 | 研究会WG1の成果物(ポイント集)を公開し、活用を推進 |
CIO/CDXOの役割再定義 | 継続議論 |
DX成功パターン | デジタルガバナンスコードの業種別リファレンスとの整合性を図りながら、有識者との検討を進め、パターンを具体化 |
デジタルガバメント・コードの普及 | 業種別、中小企業向けリファレンスガイドの作成・投資家サイドへの働きかけも検討 |
DX認定/DX銘柄の普及 | DX認定の本格開始、認定付与の際のインセンティブの検討・DX銘柄の普及とDX認定との連携 |
DX推進指標等 | DXの加速をDX推進指標により継続的に評価 |
レガシー刷新の推進 | プラットフォームデジタル化指標の策定、及びプラットフォーム変革手引書の公開を年度内目処で実施 |
ツール導入に対する支援 | 既存施策の普及展開・デジタル化とDX事例集の内容の拡充と展開 |
ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進 | ユーザー企業とベンダー企業の共創関係の在り方について引き続き検討を進め、ベンダー企業が有する機能と能力の整理及び競争力に係る指標を策定 |
研究開発に対する支援 | 研究開発税制による税制優遇を創設 |
デジタル技術を活用するビジネスモデル変革の支援 | 産業競争力強化法(DX投資促進税制)、中小企業向けDX推進指標、DX認定企業向け金融支援について検討 |
共通プラットフォーム推進 | 社会インフラや民間事業の非競争領域における共通プラットフォームの構築を推進 |
アーキテクチャ推進 | 情報処理推進機構デジタルアーキテクチャとデザインセンターを中心にアーキテクチャ設計と人材育成を推進 |
リスキル・流動化環境の整備 | 学びの場の形成、スキルの見える化等の仕組みを検討 |
まとめ
本記事では、DX推進に対する政府政策の方向性、DX推進における政府の施策について解説しました。
政府はDX推進に対して4つの政策を掲げており、「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート2(中間取りまとめ)」において各対応策を提言しています。なお、政府は今後の方向性として、本記事で解説した施策の具体的な検討を進めていく予定です。
これから企業にDXを取り入れる予定の方は、ぜひ本記事の政府政策の内容を理解し、自社のDX推進に役立ててみてください。