観光業界におけるDXの定義とは?現状の課題点とDX推進事例を徹底解説
現状の観光業界におけるDXをご存知ですか?観光業界のDXとは、最新のデジタル技術を活用し、観光をより便利にするための変革のことです。ビジネスや医療分野におけるDXとは少しだけ異なります。
新型コロナウイルス感染症の影響によって大打撃を受けた観光業界。その観光業界における地域経済を立て直すためにも、一刻も早くDXを推進しなければなりません。しかし、観光業界のDX推進は簡単ではなく、いくつもの課題を解決する必要があります。
そこで本記事では、観光業界におけるDXの定義、内容や課題、推進事例を解説します。最後までご覧になれば、観光業界におけるDXのイメージが明確になるでしょう。
観光業界におけるDXとは?
まずは観光業界のおけるDXを明確にしましょう。
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を用いて業務の効率化や価値の向上を実現し、大規模なビジネスモデルの変革です。単なるITシステムの導入だけに留まらず、その先にある大きな変革を目指します。
最近、観光業界のDXにも注目が集まっています。その主な理由としては、新型コロナウイルス感染症の影響により大打撃を受けたためだと考えられます。観光業界の地域経済を立て直すためには、一刻も早くDXを推進する必要があるのです。
しかし、観光業界にDXを推進することは決して容易ではありません。すでに大手企業を中心に観光業界のDXが進められてはいるものの、日本全体でみると推進状況はいまひとつです。また、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない現状、自粛ムードは依然として継続しています。この状況を脱却しない限り、観光業界における地域経済の立て直しは困難だと予想されます。
以上のことを踏まえて観光業界におけるDXを定義すると、5G、Wi-Fi、IoT、位置情報、仮想現実、拡張現実、ビッグデータ、自動運転など、これら最新のデジタル技術を活用し、観光をより便利にして盛り上げるための変革、それこそが観光業界のDXだといえます。このDXを推進するためにも、観光業界全体で取り組まなければなりません。
観光業界のDXで実現できる2つのこと
観光業界におけるDXについては理解できたでしょうか?続いて、観光業界のDXで実現できることを2つ解説します。DXで実現できる内容を知ることで、より明確にイメージできるはずです。
インターネットによる新しい観光の実現
観光業界におけるDXの内容1つ目は、インターネットによる新しい観光の実現です。最新のデジタル技術を積極的に取り入れることにより、パソコンやスマホ、タブレットなどの端末を介し、現地とインターネット通信を連結させます。そうすることで、従来にはないオンラインによる観光・旅行が楽しめます。
具体的には、自身で旅行中の行き先を指示する、現地のガイドや住民と会話をするなどがあげられます。また、インターネット体験のみで終えるのではなく、現地のお土産を消費者の自宅へ郵送するなどの企画も実現可能です。なお、これらは一部の地域ですでに実施されており、観光業界の新たな可能性を見出しています。
上記のオンラインによる観光・旅行が本格的に実現すると、消費者はリモートで完結させることが可能です。それに伴い、現状抱えている外出自粛に対する大きな課題が解消されます。
オンラインとオフラインを掛け合わせた観光
観光業界におけるDXの内容2つ目は、オンラインとオフラインを掛け合わせた観光です。内容1つ目はほとんどがオンラインで完結していましたが、掛け合わせた観光も模索されています。
これは、実際に現地で行う観光をより便利にさせるというものであり、具体的には下記のような変革が考えられます。
- 多様な観光ルートの選択肢の提供とナビゲーション
- 大量の高速データ処理による予測と意思決定支援
- ユーザー像の描出とパーソナル対応
完全オンラインによる観光は非常に画期的ではあるものの、消費者のニーズをすべて満たすことができません。そのため、オンラインとオフラインを掛け合わせた観光が模索されています。
観光業界におけるDXの課題3つ
ここまで、観光業界のDXで実現できることを解説しましたが、観光業界のDX推進は決して容易ではありません。実現するためにはいくつかの課題が立ちはだかります。そこで下記3つの課題を事前に把握し、解決策を探しましょう。
デジタル技術に向けた仕組みづくり
観光業界におけるDXの課題1つ目は、デジタル技術に向けた仕組みづくりです。観光業界においては、最新のデジタル技術やITシステムの知見を持った人材が少ない傾向にあります。ましてや仕組みづくりとなると、さらにハードルが高くなります。
また、DXを実現するためにはデジタル技術を推進する人材の確保だけでなく、データを運用する通信インフラはもちろんのこと、データを収集するための最適な環境を構築しなければなりません。
それらは簡単に実施できるものではないため、「誰がどこから手を付けて良いのかわからない」という不透明な状態に陥ってしまうのです。
自治体と民間の協力体制
観光業界におけるDXの課題2つ目として、自治体と民間の協力体制があげられます。
観光業界のDXは非常に大規模かつ複雑なプロジェクトであるため、莫大な予算とDX推進人材が必要となります。しかし、民間事業者には最新設備やデジタル技術を導入するだけの予算や人員の余裕はありません。そのため、余力が少ない民間事業者だけではDXを進めることは困難なのです。
また、デジタルデータを運用するには宿泊施設の導入だけでは不十分であり、そのシステムを活用するためのインフラ整備を同時に進める必要があります。
上記のような理由から、観光業界では自治体と民間の協力体制が求められているのです。しかし、現状は自治体との協力体制があまり進んでいません。
DXにおける導入効果の周知
観光業界におけるDXの課題3つ目は、DXにおける導入効果の周知です。難しいといわれている観光業界のDXですが、一部の企業では積極的にDXを取り進めています。
しかし、観光業界の関係者に対してDXの導入効果があまり伝わっていないことから、適切な公的支援を得られていない可能性が考えられています。
上記のことから、「観光業界におけるDXがどのような変革を起こすのか」など、以前よりも情報共有を積極的に進める必要があるのです。なお、実際に導入されているDXの一例としては、AI起用の宿泊施設診断システムやスマートチェックインなどがあげられます。
観光業界におけるDX推進事例3つ
観光業界におけるDXの課題は大まかに理解できたかと思います。最後に、観光業界のDX推進事例を3つご紹介します。観光業界のDXを推進させるためのヒントが得られるはずです。
「グッドフェローズJTB」の創設
観光業界におけるDX推進事例1つ目は、JTBによる新会社「グッドフェローズJTB」の創設です。大手旅行会社JTBでは、新会社「グッドフェローズJTB」の立ち上げを行い、企業DXを積極的に活用しています。
このDXの活用により、3密の回避や非接触、自動化といった現在必要とされている顕在ニーズに応えられる解決策の展開を実施しています。具体的には以下のような内容があげられます。
- 最新の施設運営情報をリアルタイムで旅行者に伝える
- ホテル側が非接触決済に利用できる端末を無償提供する
- 入場証明済みデータを販売事業者に提供する
上記のように、DXを推進することで現在起こっている問題に対して迅速に対応できています。
「AIチャットボット」の導入
観光業界におけるDX推進事例2つ目として、ニセコによる「AIチャットボット」の導入があげられます。AIを活用したリアルタイムのコミュニケーションプラットフォーム「BEBOT」を導入したことにより、インターネットを介した観光案内や交通情報、天気情報など、観光に役立つ情報をより効率的な形式で提供しています。
また、この「BEBOT」では利用者自身のスマートフォンからリアルタイム情報を入手できるほか、チャットを通じて利用者の求めるニーズを把握することにより、顧客満足度の高いサービス提供を実現しています。
従来よりニセコでは「夏と冬で繁閑期の差が大きい」という課題を抱えていましたが、「BEBOT」を導入したことで解決に近づきつつあります。今後は外国の方に向けても魅力を伝えられるよう、DX推進に対してさらに力を入れていく方針です。
「クーポン付き音声ガイド」の実現
観光業界におけるDX推進事例3つ目は、凸版印刷とMEBUKUによる「クーポン付き音声ガイド」の実現です。凸版印刷とMEBUKUはそれぞれが運営するサービスを連携したことで、観光業界にDXを推進したとともに、新たな価値提供の手段を生み出しました。
具体的な内容は「観光施設で対象の音声ガイドを利用すると、周辺の観光施設や店舗で利用できる電子クーポンを配布する」というものです。
このDXの推進により、観光客が1箇所の観光地に留まるという事態を避け、周辺の観光施設や店舗への積極的な訪問を可能としています。また、利用してもらった訪問先で配布した電子クーポンを活用することで、新たな消費を作り出す仕組みづくりも実施しています。
まとめ
本記事では、観光業界におけるDXの定義、内容や課題、推進事例を解説しました。
現状の観光業界においては、新型コロナウイルス感染症によって大打撃を受けています。その地域経済を立て直すためにも、一刻も早くDXを推進して観光の新たな可能性を模索する必要があります。
観光業界のDXを実現して現状を打開するためには、観光業界全体で取り組むのはもちろんのこと、関係者も一緒に取り進めていかなければなりません。本記事がその活動の参考になれば幸いです。