自治体におけるDXの取り組み「自治体DX推進計画」とは?具体的な6つの内容を解説

デジタル社会の実現に向けた取り組み「自治体DX推進計画」をご存知ですか?この計画では6つの具体的な取り組みが立案され、支援やデジタル化の推進が実行されています。

本記事では、自治体DX推進計画の意義や目的、具体的な取り組みについて解説します。最後までご覧になることで、自治体DX推進計画の全貌が明らかとなり、自社のDX推進に活かせるはずです。

DX推進手順

デジタル社会の実現に向けた取り組み「自治体DX推進計画」をご存知ですか?この計画では6つの具体的な取り組みが立案され、支援やデジタル化の推進が実行されています。

本記事では、自治体DX推進計画の意義や目的、具体的な取り組みについて解説します。最後までご覧になることで、自治体DX推進計画の全貌が明らかとなり、自社のDX推進に活かせるはずです。

自治体DX推進計画とは?

自治体DX推進計画とは、デジタル社会の実現に向けた自治体によるDX推進計画のことです。政府が2020年12月に決定した「デジタル・ガバメント実行計画」の各施策をもとに、自治体が取り組むべき項目を具体化しました。

この自治体DX推進計画の対象期間については、2021年1月から2026年3月までとされており、組織体制の整備、デジタル人材の確保・育成、計画的な取り組み、都道府県による市区町村支援などが計画されています。なお、自治体は本計画を実現するにあたって下記のように述べています。

「自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくことが求められる」

さらに、民間のデジタルやビジネスに新たな価値を創出するためにも、自治体はデータの共有や円滑な流通の促進が大切であると提言しています。

自治体DX推進計画の具体的な取り組み

ここまで、自治体DX推進計画の基礎概要を解説しました。続いて、自治体DX推進計画の具体的な取り組みをみていきましょう。取り組み内容を理解すれば、自社に効果的な施策を実施できるはずです。

自治体の情報システムの標準化・共通化

自治体の情報システムについては「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けた検討を踏まえ、基幹系17業務システムから、国の策定する標準仕様を準拠とするシステムに移行する計画です。このシステム移行の目標時期は2025年度としています。なお、国の主な支援策については下記をご参照ください。

  • 自治体の17業務を処理するシステムの標準仕様を関係府省が作成する
  • 法律案を2021年の通常国会に提出する
  • 国が「(仮称)Gov-Cloud」を構築する
  • クラウド活用を原則とした標準化・共通化に向けた自治体の取り組みを支援する

マイナンバーカードの普及促進

マイナンバーカードの普及促進を行い、2022年度末までに住民のほとんどがマイナンバーカードを所有している状態を目指します。また、交付円滑化計画のもと、マイナンバーカードの交付体制を充実化させていく方針です。

具体的な普及促進としては、広報活動の強化、臨時交付窓口における設置費用の支援、出張申請受付や申請サポートの支援などがあげられます。マイナンバーカードのさらなる安定稼働に向けて、国と自治体による対応策の強化が実施されています。

自治体の行政手続きのオンライン化

政府は自治体における行政手続きのオンライン化が、デジタル社会において重要であると考えて施策を取り進めています。先ほどお話したマイナンバーカードについても、オンライン手続きを可能にする方針を示しています。

そのほか、マイナポータルに自治体との接続機能の実装、マイナポータルのUI・UXの改善、マイナポータルと自治体の基幹システムとの接続支援などを実施する予定です。

自治体のAI・RPAの利用推進

少子高齢化による労働人口の減少に伴い、自治体のAI・RPAの利用推進が取り組まれます。このAI・RPAなどのデジタル技術は、限られた経営資源のなかで行政サービスを提供し続けるためにも、積極的に活用すべきものだと考えられています。それに伴う国の支援策は下記のとおりです。

  • AI・RPA導入ガイドブックの策定
  • 自治体行政のスマートプロジェクト事業
  • 市町村における共同利用の支援等

テレワークの推進

さまざまな業務を効率化するテレワークも重要だとされています。先ほどの「自治体の情報システムの標準化・共通化」が実施されることで、自治体職員のテレワーク化にもつながります。また、テレワーク導入事例を参考にし、下記のような取り組みが令和2年度に実施されました。

  • テレワークを活用できた業務や、活用できなかった業務の調査・整理
  • テレワーク実施時の地方公共団体や、民間企業のノウハウによる効果的な取り組み調査
  • これらを踏まえたテレワーク導入における手順の整理

これらの取り組みを踏まえ、令和3年度もテレワークの推進に向けた活動が実施されています。

セキュリティ対策の徹底

セキュリティポリシーの見直しを図るなど、セキュリティ対策を徹底する取り組みが行われています。主な取り組みとしては、新たなセキュリティ対策における在り方の検討、次期自治体情報セキュリティクラウドへの移行の支援などがあげられます。

また、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、自治体における働き方改革が急速化していることから、インターネット回線を使用した安全性の高いテレワークの導入を開始しています。

自治体DXと合わせて取り組むべき2つの計画

自治体DX推進計画の具体的な取り組みは理解できたでしょうか?次に、自治体DXと合わせて取り組むべき2つの計画を解説します。

地域社会のデジタル化

自治体DXと合わせて地域社会のデジタル化を推進させ、すべての地域がデジタル化によるメリットを享受できる環境を目指します。具体的な取り組みは、光ファイバーの全国展開、5Gサービスの開始、ローカル5Gの導入などが考えられています。

そのほか、高齢者などの住民が実感できるデジタル活用の支援、デジタル技術を用いた観光振興などの魅力ある地域づくり推進など、地域社会のデジタル化の取り組みとして実施する方針です。

デジタルデバイド対策

政府は自治体DXと合わせてデジタルデバイド対策も考えています。デジタルデバイドとは、インターネットなどの情報通信技術において、利用できる者とできない者に生じる格差を表す言葉のことです。

「デジタル活用支援員」の周知や連携を実施し、デジタルデバイド対策を実行します。具体的な取り組みは下記をご参照ください。

  • オンラインによる行政手続き・サービス利用に関する助言や相談を「デジタル活用支援員」が行う
  • 「地域デジタル社会推進費」を2,000億円計上し、地域社会のデジタル化を集中して推進する

政府はこのような取り組みでデジタルデバイド対策を実行していく予定です。

自治体DX推進計画を実行に移す4つのステップ

ここまで、自治体DXと合わせて取り組むべき計画をお話しました。最後に、自治体DX推進計画を実行に移す4つのステップをみていきましょう。自治体DX推進計画の流れを理解できるはずです。

DXの認識共有・機運醸成

国や地方の行政は新しい技術をただ使うのではなく、利用者目線で行政サービスの利便性向上を目指す必要があります。その利便性向上を実施するためにも、DXを推進する上ではリーダーシップや強いコミットメントはもちろんのこと、首長や幹部職員がDXを深く理解しておかなければなりません。

また、組織をあげてDXを推進する際には、一般職員を含めた組織全体で「DXとはどういうものか」「なぜいまDXに取り組む必要があるのか」など、認識を共有しておくことが重要です。

そのほか、自治体DX推進計画を成功に導くための「サービス設計12箇条」が公開されています。各自治体はDXを推進する際、このサービス設計12箇条を参考に実施しています。

【サービス設計12箇条】

第1条 利用者のニーズから出発する

第2条 事実を詳細に把握する

第3条 エンドツーエンドで考える

第4条 全ての関係者に気を配る

第5条 サービスはシンプルにする

第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める

第7条 利用者の日常体験に溶け込む

第8条 自分で作りすぎない

第9条 オープンにサービスを作る

第10条 何度も繰り返す

第11条 一遍にやらず、一貫してやる

第12条 情報システムではなくサービスを作る

全体方針の決定

DXの認識共有・機運醸成が実行されたあとは、DXを積極的に推進していくための全体方針を決定する必要があります。この全体方針は、DX推進のビジョンや工程表から構成されるものであり、各自治体によって異なる方法が設けられています。

なお、目指すべきデジタル社会のビジョンは「デジタルの活用により、1人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰1人取り残さない、人に優しいデジタル化~」です。また、このビジョンを実現するためには「住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要」だとされています。

その上で、自治体におけるDX推進の意義は下記の2つが考えられています。

  1. 住民の利便性の向上や業務効率化
  2. EBPM等による行政の効率化・高度化や民間のデジタル・ビジネスなど新たな価値等の創出

※EBPM(Evidence Based Policy Making)=統計データや各種指標など、客観的な根拠や証拠を基にし、政策の決定や実行を効果的に行うこと

推進体制の整備

全体方針を決定した上でDXの推進体制を整備するためにも、組織・人材の検討が求められます。組織は全庁的・横断的な体制づくりが必要であり、人材についてはデジタル人材の確保や育成が重要となります。

また、自治体DXの推進体制を整備するにあたっては、DX推進担当部門の設置、部門間の連携などが必要です。そのほか、DXを推進するための人材育成方針や育成手法も重要だとされています。

DXの取組みの実行

ここまでの取り組みを踏まえ、DX推進の計画を実行していきます。取り組み内容は先ほどお話した6つの項目であり、各種取り組みに応じて考え方を変化させていきます。また、DX推進の計画を実行する際には、各自治体によるPDCAサイクルの進捗管理が非常に重要です。

まとめ

本記事では、自治体DX推進計画の具体的な取り組み、実行に移すための4つのステップを解説しました。

自治体DX推進計画とは、政府が2020年12月に決定した「デジタル・ガバメント実行計画」の各施策をもとに、自治体が取り組むべき項目を具体化したものです。その項目は大きく分けて6つあり、各施策に応じて考え方を変化させることがキーポイントとなります。

今回解説した自治体DX推進計画に興味を持った方は、過去にお話した「DX推進における政府政策に対する4つの考え方とは?政府の方向性を見定めよう!」もチェックしてみてください。政府が計画するDXは自治体だけでなく、基本的な考え方は民間企業のDXにも役立つはずです。

「What'sDX」編集部

執筆「What'sDX」編集部

これからDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうとしている、既に取り組んでいるみなさまのさまざまな「What’s DX?」の答えやヒントが見つかるサイト「What'sDX」の編集部です。